筋肉痛に湿布を貼ると筋肉がつかない?筋肥大への影響をわかりやすく解説
筋トレの翌日、じわじわやってくる筋肉痛。
「よし、今日も筋肉が頑張った証拠だな」
なんて思いながら湿布を貼ったあとに、
「湿布を貼ると筋肉がつきにくくなるらしい」
そんな話を見かけたら、ちょっと気になりますよね。
せっかく筋肉を育てるために頑張ったのに、湿布を貼ったせいで成長を邪魔していたら……。
筋肉博物館の館長としても、これは放っておけない話です。
結論からいうと、筋肉痛に湿布を貼ったからといって、すぐに筋肉がつかなくなるわけではありません。
ただし、湿布の中には炎症を抑える痛み止め成分が入っているものがあり、その働きと筋肉の成長には少し気になる関係があります。
そこで今回は、筋肉痛に湿布を貼ると本当に筋肉がつきにくくなるのか、研究結果をもとにできるだけわかりやすく解説していきます。
それでは今回も、筋肉の中で何が起きているのか、一緒に展示をのぞいてみましょう。
この項目では、「炎症=悪いもの」というイメージをいったんほぐしてから、湿布との関係につなげると理解しやすくなります。
湿布で筋肉がつきにくくなると言われるのは「炎症」を抑える働きがあるから
そもそも、なぜ「筋肉痛に湿布を貼ると筋肉がつきにくくなる」と言われるのでしょうか。
その理由のひとつが、湿布に含まれる痛み止め成分が「炎症」を抑える働きを持っていることが理由にあげられます。
筋トレと炎症についてこの項目では見ていきましょう。
筋トレ後の炎症は、筋肉が回復・成長する過程にも関わっている
筋トレをすると、筋肉には普段よりも大きな刺激が加わり、体の中では、その刺激に対応するためにさまざまな反応が起こります。
そのひとつが炎症反応です。
炎症と聞くと、なんとなく「できるだけ抑えた方がいいもの」に感じますよね。
しかし筋肉にとっては、炎症反応も回復や適応につながる一連の流れの一部です。
イメージするなら、筋トレによって筋肉から「いつもより大きな仕事をしました!」という報告が届き、体がそれを受け取って次に備え始めるようなもの。
この反応をすべて悪者扱いするのは少しかわいそうなところです。
もちろん、炎症が強ければ強いほど筋肉が成長するという意味ではありません。
大切なのは、筋トレ後に起こる自然な炎症反応の一部が、筋肉が変化していく仕組みに関わっているということです。
痛み止め成分は、筋肉の成長に関わる炎症反応も抑える可能性がある
一部の湿布には、ロキソプロフェンやジクロフェナクなどの痛み止め成分が含まれています。
これらはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と呼ばれる薬で、炎症を抑えることで痛みを和らげます。
痛みがあるときにはありがたい働きなのですが、ここでひとつ疑問が生まれます。
「炎症反応が筋肉の成長にも関わっているなら、それを薬で抑えると筋肉も育ちにくくなるのでは?」
これが、「湿布を貼ると筋肉がつきにくくなる」と言われる大きな理由です。
実際に、NSAIDsによって筋トレ後の反応が変化することを示した研究もあります。
ただし、ここで注意したいのが、研究の多くは湿布ではなく「飲み薬」を使って調べたものだということ。
湿布を貼った場合もまったく同じように筋肉の成長が抑えられるのかというと、そこまではまだはっきり分かっていません。
つまり、
「炎症を抑える薬だから、湿布を貼ったら筋肉がつかない」
と単純につなげることはできないのです。
では実際の研究では、どのくらい筋肉への影響が確認されているのでしょうか。
このあと、もう少し詳しく展示を見ていきましょう。
湿布なら何でも筋肉に影響するわけではない
ここまで読むと、
「じゃあ筋肉をつけたいなら、湿布は使わない方がいいの?」
と思ってしまうかもしれません。
でも、湿布なら何でも筋肉の成長に影響するわけではありません。
大切なのは、湿布そのものではなく「どんな成分が入っているか」です。
湿布にはさまざまな種類があり、痛みや炎症を抑える成分が入っているものもあれば、そうではないものもあります。
筋肉への影響を考えるときは、まずここを分けて考えてみましょう。
痛み止め成分が入った湿布と入っていない湿布がある
筋肉の成長との関係で注目されているのは、主にNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と呼ばれる成分です。
代表的なものには、
- ロキソプロフェン
- ジクロフェナク
- ケトプロフェン
- インドメタシン
などがあります。
上記の名前を入れて〇〇配合!!とかって見たことありますよね?あれです。
名前だけ見ると少し難しそうですが、まぁ…覚える必要はありません。
使っている湿布のパッケージにある「成分」の欄を見てみればOKです。
これらの成分には炎症を抑えて痛みを和らげる働きがあるため、前の項目で紹介したように、筋トレ後の炎症反応にも影響する可能性があります。
一方で、湿布という名前がついているものすべてが、同じ成分・同じ仕組みで痛みを和らげているわけではありません。
つまり、
「湿布を貼る=筋肉の成長を邪魔する」
とまとめて考えるのは少し言い過ぎな面があるのです。
冷感・温感タイプの湿布はNSAIDs入りの湿布とは分けて考えよう
湿布には「冷感タイプ」や「温感タイプ」と書かれたものもあります。
ここで注意したいのが、
「冷たい湿布だから炎症を抑える」
「温かい湿布だから筋肉の成長には影響しない」
と単純には判断できないことです。
冷たく感じる、温かく感じるというのは使用感の違いであり、筋肉への影響を考えるうえでは、やはり含まれている成分を確認することが大切です。
たとえば、冷感タイプの湿布であってもNSAIDsが含まれている商品はあります。
そのため、筋肉への影響が気になる場合は「冷湿布か温湿布か」ではなく、パッケージに記載された有効成分を見てみましょう。
とはいえ、NSAIDs入りの湿布を一度使ったからといって、筋肉がつかなくなると心配する必要はありません。
前述したように、そもそも「痛み止めが筋肉の成長を抑える」という話の根拠になっている研究の多くは、湿布ではなく飲み薬を使ったものです。
では実際の研究では、どんな結果が出ているのでしょうか。
次は、やや難しくなりますが、もう少し奥へ足を進めてみましょう。
痛み止めは本当に筋肉をつきにくくする?研究を見てみよう
ここまで「痛み止め成分が筋肉の成長に影響する可能性がある」と説明してきました。
では、本当に痛み止めを使うと筋肉はつきにくくなるのでしょうか。
ここからはさらに少しだけ奥へ進んで、実際にどのような結果が報告されているのか見てみましょう。
難しい話はできるだけ抜きにして、大事なところだけ紹介します。
痛み止めを高用量で毎日使うと筋肥大が小さくなった研究がある
痛み止めと筋肉の成長について、よく取り上げられる研究があります。
2018年に発表された研究では、18〜35歳の男女31人が8週間の筋力トレーニングを行いました。
参加者は、
- イブプロフェンを1日1,200mg飲むグループ
- 低用量のアスピリンを1日75mg飲むグループ
に分かれています。
その結果、低用量アスピリンを飲んだグループでは約7.5%増えたのに対して、高用量のイブプロフェンを飲んだグループでは約3.7%でした。
つまり、筋肉がまったくつかなかったわけではありませんが、高用量のイブプロフェンを毎日使ったグループでは筋肥大が小さかったのです。
また、別の研究では、筋トレ後にイブプロフェンを摂取したことで、筋肉を作る「筋タンパク質合成」の増加が抑えられたことも報告されています。
こうした研究が、
「痛み止めを使うと筋肉がつきにくくなるのでは?」
と言われる根拠のひとつになっています。
ただし、これらは「飲み薬」を使った研究
ここで今回の記事における、とても大切なポイントがあります。
先ほど紹介した研究で使われているのは、湿布ではなく「飲み薬」です。
しかも2018年の研究では、イブプロフェンを1日1,200mg、8週間にわたって使用しています。
そのため、
「高用量の痛み止めを毎日飲んだら筋肥大が小さくなった」
という研究結果を、
「筋肉痛のときに湿布を1枚貼ったら筋肉がつかなくなる」
とそのまま置き換えることはできません。
さらに、イブプロフェンを1日400mg使用しながら6週間筋トレを行った別の研究では、筋肥大や筋力への悪影響は確認されませんでした。
つまり、痛み止めと筋肉の関係は、
「使ったら筋肉がつかない」
というほど単純ではなく、薬の種類や量、使う期間などによっても結果が変わる可能性があります。
ひとつの研究だけを見て湿布を悪者にしてしまうのは避けたいところです。
湿布でも筋肉には作用するが、筋肥大を妨げるかまでは分かっていない
では、肝心の「湿布」はどうなのでしょうか。
湿布についても興味深い研究があります。
2013年の研究では、12人の健康な人の太ももにジクロフェナクというNSAIDsを含む湿布を4日間使用しました。
すると、湿布の成分が筋肉まで届き、運動後に起こる炎症に関係した反応を抑えることが確認されました。
しかし、この研究では「筋肉がどれだけ大きくなったか」は調べていません。
つまり、現時点で分かっているのは、
「NSAIDsを含む湿布でも筋肉の中に作用することはある」
というところまで。
「湿布を貼ると筋肥大が小さくなる」とまでは、この研究から判断できないのです。
痛み止めを高用量で長期間飲むことと、筋肉痛のときに湿布を使うことは同じではありません。
そのため、筋肉痛に湿布を使ったからといって「せっかくの筋トレが無駄になった」と心配する必要はないと言ってもよいでしょう。
筋肉をつけたい人は湿布とどう付き合えばいい?
ここまで見てきたように、湿布を使ったからといって、すぐに筋肉がつかなくなるわけではありません。
とはいえ、湿布はあくまで痛みを一時的に痛みを和らげるための物。
「筋肉痛になったら、とりあえず毎回湿布」
という使い方は少し見直してもよいでしょう。
筋肉博物館としておすすめしたいのは、湿布を完全に避けることではなく、「必要なときに使う」くらいの距離感です。
筋トレ後に毎回湿布を貼る必要はない
筋肉痛があるたびに、なんとなく湿布を貼っている人もいるかもしれません。
しかし、軽い筋肉痛であれば、必ずしも湿布を使う必要はありません。
筋トレ後の体では、筋肉が刺激を受けたあとに回復や適応に向けたさまざまな反応が起こっています。
そのため、特に痛みが強くないのであれば、
- しっかり睡眠をとる
- 食事で必要な栄養をとる
- トレーニングした部位を休ませる
- 無理のない範囲で軽く体を動かす
といった基本的な回復を優先してみましょう。
「筋肉痛=湿布を貼らなければいけない」というわけではありません。
筋肉が頑張った翌日は、まず休ませてあげる。
これも立派な筋肉のお世話です。
たまに湿布を使う程度なら影響を心配しなくて大丈夫
一方で、
「昨日湿布を貼っちゃった……」
と不安になる必要もありません。
これまで紹介した研究では、筋肥大への影響が確認されたものの多くが、高用量の痛み止めを毎日飲み続けたケースです。
また、対象の人数も非常に少ない研究です。
筋肉痛がつらい日に湿布を使ったからといって、それだけで筋トレの効果がなくなるとは考えにくいでしょう。
筋肉をつけたいからと、痛みを無理に我慢する必要もありません。
必要なときに、用法・用量を守って使う。
そのくらいの付き合い方で十分でしょう。
湿布で痛みが軽くなっても無理にトレーニングを続けない
もうひとつ注意したいのが、湿布によって痛みが楽になったときです。
痛みが減ると、
「これなら今日も同じ部位を鍛えられそう」
と思うかもしれません。
しかし、痛みが感じにくくなったことと、筋肉が十分に回復したことは同じではありません。
湿布は痛みを和らげるためのものであって、筋肉の回復そのものを一気に早める道具ではないからです。
筋肉痛が強く残っているときは、同じ部位を無理に追い込まず、別の部位を鍛えるか休養日にするのも立派な選択です。
筋肉は「鍛えている時間」だけでなく、「休んでいる時間」にも次のトレーニングへ向けた準備を進めています。
せっかく育てている筋肉です。
痛みを隠して酷使するより、しっかり休ませながら長く付き合っていきましょう。
筋肉痛に湿布を貼っても筋肉がつかなくなるわけではない|まとめ
筋肉痛に湿布を貼ると、筋肉がつかなくなる。
そんな話を聞くと、せっかく頑張った筋トレが無駄になるようで不安になりますよね。
でも、今回見てきたように、湿布を貼っただけで筋肉がつかなくなると考える必要はありません。
たしかに、ロキソプロフェンやジクロフェナクなどのNSAIDsには炎症を抑える働きがあり、筋肉の成長に関わる反応へ影響する可能性があるとする研究もあります。
ただし、これらは主に「飲み薬」を使った研究です。
筋肉痛のときに湿布を使うことと、毎日高用量の痛み止めを飲み続けることは同じではありません。
現時点では、
- 湿布を貼ったら筋肉がつかなくなるとは言えない
- NSAIDs入りの湿布は筋肉の中にも作用する可能性がある
- ただし、湿布によって筋肥大がどの程度変わるかはまだ十分に分かっていない
- 軽い筋肉痛なら、休養・睡眠・食事を優先する
- 痛みが日常生活の邪魔になるなら、必要に応じて湿布を使う
- 湿布で痛みが軽くなっても、無理に同じ部位を鍛えない
このくらいの考え方で十分でしょう。
筋肉を育てたいからといって、湿布を必要以上に怖がる必要はありません。
反対に、筋肉痛になるたびに「とりあえず湿布」と習慣にする必要もありません。
筋肉の状態を見ながら、必要なときには助けてもらう。
そんな付き合い方がちょうどいいのではないでしょうか。
筋肉博物館で何度もお伝えしているように、筋肉は鍛えて終わりではありません。
刺激を受けて、休んで、また次の刺激に備える。
その時間まで含めて、筋肉を育てる大切な過程です。
筋肉痛がやってきた日は、「今日はどんなお世話をしてあげようかな」と、少しだけ筋肉の声に耳を傾けてあげてくださいね。
