運動した次の日、階段を下りようとしたら太ももがズキズキ。

筋トレをした翌朝、体を少し動かすだけで痛い。

そんな経験、みなさん一度はあるでしょう。

いわゆる「筋肉痛」ですが、そもそも体の中では何が起きているのかご存知ですか?

「乳酸がたまっているから?」「筋肉が傷ついているって本当?」「筋肉痛にならないと筋トレの意味はない?」

知っているようで、意外と知らないことも多いのが筋肉痛。

そこで今回は筋肉博物館の館長として、筋肉痛とは何なのか、なぜ運動のあとに痛くなるのかをできるだけわかりやすく解説します。

筋肉痛が起こる仕組みを知れば、運動後の痛みもただつらいだけではなく、「今、筋肉ではこんなことが起きているのか」と少し違って見えてくるはずです。

それでは、筋肉痛の展示室をのぞいてみましょう。

筋肉痛はなぜ起こる?

解説します!と言った直後にあれですが、実は筋肉痛が起こる詳しい仕組みは、現在でも完全に解明されているわけではないのです。

一般的には、慣れていない運動によって筋肉やその周辺組織に負担がかかり、その後に起こるさまざまな反応によって痛みを感じやすくなると考えられています。

少し難しく聞こえますが、順番に見ていけばそれほど複雑ではありません。

順を追って見ていきましょう。

筋肉に慣れていない刺激が加わる

筋肉痛が起こりやすいのは、筋肉がまだ慣れていない刺激を受けたときです。

たとえば、

  • 久しぶりに筋トレをした
  • いつもより重い重量を扱った
  • 普段しないスポーツをした
  • 長い階段や坂道を歩いた

といった場面です。

筋肉からすれば、いきなり普段とは違う仕事を任されたようなもの。

特に筋肉痛が起こりやすいとされているのが、筋肉が力を出しながら引き伸ばされる動きです。

たとえば、スクワットでゆっくりしゃがむときや、階段を下りるときなどがこれに当たります。

こうした動きは「エキセントリック収縮」と呼ばれ、筋肉痛との関係が深いことが知られています。

筋肉の細かな損傷やその後の反応が痛みに感じる

慣れていない強い刺激を受けると、筋肉やその周辺の組織には細かな変化や損傷が生じます。

すると体は、その部分を元の状態へ戻そうとして炎症反応を起こします。

その過程で痛みに関わる物質が増えたり、痛みを感じ取る神経が刺激に敏感になったりすることで、筋肉を動かしたときや押したときに「痛い」と感じると考えられています。

これが筋肉痛が起こる仕組みとして広く知られている考え方です。

ただし、ここでひとつ覚えておきたいことがあります。

「筋肉痛=筋線維が傷ついた痛み」と完全にイコールで結べるほど、話は単純ではありません。

近年の研究では、はっきりとした筋線維の損傷が見られなくても筋肉痛のような痛みが起こることが示されており、痛みに関わる神経の感度が変化する仕組みなども研究されています。

つまり、筋肉痛には筋肉の損傷だけでなく、いくつもの反応が関係している可能性があるのです。

筋肉痛はとても身近な現象ですが、その正体は意外と奥深い。

筋肉博物館としても、まだ研究が続いている興味深い展示のひとつです。

【ミニコラム】筋肉痛は「乳酸がたまるから」ではない?

昔は「運動すると乳酸がたまり、それが筋肉痛の原因になる」と説明されることがありました。

しかし現在では、乳酸が筋肉痛の直接的な原因になるという考えは支持されていません。

そもそも乳酸に関わる変化は運動後比較的早い段階で起こるのに対して、一般的な筋肉痛は運動から時間が経ってから現れます。

「昨日の筋トレで乳酸がまだ残っているから痛い」というわけではないようですね。

筋肉痛が運動の翌日や翌々日に出るのはなぜ?

筋トレをした直後はなんともなかったのに、次の日になってから急に痛くなる。

筋肉痛の不思議なところですよね。

このように、運動してからしばらく時間が経って現れる痛みは「遅発性筋肉痛(DOMS:Delayed Onset Muscle Soreness)」と呼ばれています。

一般的には運動後すぐではなく、数時間から翌日にかけて痛みを感じ始め、24〜72時間ほどで強くなることが多いとされています。

「遅発性筋肉痛」は運動の刺激によって遅れて発生する

では、なぜ筋肉痛はその場ではなく、時間が経ってから現れるのでしょうか。

前の項目で紹介したように、運動による刺激を受けた筋肉では、その後さまざまな反応が少しずつ進んでいきます。

筋肉やその周辺に変化が起こり、炎症に関係する反応や、痛みを感じる神経が敏感になる過程には時間がかかります。

そのため、

運動する

筋肉が刺激を受ける

筋肉や周辺組織でさまざまな反応が進む

痛みを感じるようになる

というように、痛みが現れるまでに時間差が生まれると考えられています。

つまり筋肉痛は、「運動した瞬間の痛みがあとからやってくる」訳ではなく、運動後に体の中で進んでいく反応によって、あとから痛みを感じるようになるものなのです。

痛みが出るタイミングには個人差がある

ただし、誰でも必ず翌日に筋肉痛になるわけではありません。

翌朝には痛くなる人もいれば、翌日の夜や翌々日に強く感じる人もいます。

筋肉痛の現れ方には、

  • どんな運動をしたか
  • どのくらい強い負荷だったか
  • その運動に慣れているか
  • どの筋肉を使ったか
  • その人自身の体の反応

など、さまざまな要素が関係します。

特に大きいのが「その運動に慣れているかどうか」です。

同じような運動を繰り返していると、体がその刺激に適応し、同じ運動をしても以前ほど強い筋肉痛が起こりにくくなることがあります。

筋肉は、以前に受けた刺激を次に活かしているわけです。

なんとも頼もしい存在ですね。

「年を取ると筋肉痛が遅くなる」とは限らない

「若いころは翌日に筋肉痛が来たのに、最近は翌々日に来る。年を取ったからかな?」

そんな話を聞いたことがあるかもしれません。

実際に体感的にそう感じている人も多いのでは無いでしょうか。

しかし、「年齢を重ねるほど筋肉痛が出るのが遅くなる」と単純に言える科学的な根拠はありません。

若い人と高齢者を比較した研究でも、筋肉痛の出方に明確な差がみられなかった例があります。

一方で、年齢によって筋肉の回復の仕方などに違いがみられる研究もあり、年齢と筋肉痛の関係はそれほど単純ではありません。

筋肉痛が翌日に来るか、翌々日に来るかは、年齢だけで決まるものではなく、運動の種類や強さ、普段の運動習慣などさまざまな条件に左右されます。

ですから、翌々日に筋肉痛が来たからといって「歳を取った証拠だ……」と落ち込む必要はありません。

筋肉痛にはもともと、時間差があるのです。

筋肉痛になりやすい運動の特徴

筋肉痛は、運動をすれば必ず起こるわけではありません。

同じ筋トレをしても筋肉痛になる日もあれば、ほとんど痛くならない日もあります。

では、どんな運動をしたときに筋肉痛は起こりやすいのでしょうか。

ポイントになるのは「筋肉にとって慣れていない刺激かどうか」です。

慣れていない運動

筋肉痛は、普段あまりしていない運動をしたときに起こりやすくなります。

たとえば、

  • 久しぶりに筋トレをした
  • 初めてのトレーニング種目に挑戦した
  • 普段しないスポーツをした
  • 旅行や登山でいつも以上に長く歩いた

といったケースです。

実際に、遅発性筋肉痛は「慣れていない運動」のあとに起こりやすいことが知られています。

反対に、同じ運動を継続していると、以前と同じ程度の運動では筋肉痛が起こりにくくなることがあります。

筋肉をはじめとした体の組織が、その刺激に少しずつ適応していくからです。

「筋トレを始めたころは毎回筋肉痛だったのに、最近あまりならなくなった」

というのも珍しいことではありません。

筋肉痛が減ったからといって、トレーニングの効果がなくなったわけではないので安心してください。

いつもより負荷の大きい運動

慣れている運動でも、普段より強い負荷をかけると筋肉痛が起こりやすくなります。

筋トレなら、

  • いつもより重量を増やす
  • 回数やセット数を増やす
  • 普段より長く運動する

といった変化です。

筋肉からしてみれば、いつもの仕事だと思っていたら、突然仕事量が増えたようなもの。

それだけ普段とは違う刺激を受けるため、筋肉痛につながることがあります。

ただし、筋肉痛を起こすために無理やり重量や回数を増やす必要はありません。

強い筋肉痛ほど効果の高いトレーニングというわけではないからです。

大切なのは、筋肉痛を目標にすることではなく、自分に合った負荷で運動を続けることです。

筋肉が伸ばされながら力を出す動き

筋肉痛と特に関係が深いのが、筋肉が伸ばされながら力を出す動きです。

この動きを「エキセントリック収縮」といいます。

……と言われても、名前だけでは少し分かりにくいですよね。

たとえば、ダンベルを使ったアームカールを想像してみてください。

ダンベルを持ち上げるときは、力こぶの筋肉である上腕二頭筋が縮みながら力を出します。

反対に、持ち上げたダンベルをゆっくり下ろすときは、上腕二頭筋が引き伸ばされながらブレーキをかけています。

こちらがエキセントリック収縮です。

ほかにも、

  • スクワットでゆっくりしゃがむ
  • 階段を下りる
  • 坂道を下る
  • ジャンプして着地する

といった動きにも、同じように筋肉がブレーキをかける働きが含まれています。

こうしたエキセントリック収縮を多く含む運動、とくに慣れていない状態で行う運動は、筋肉痛を起こしやすいことがよく知られています。

登山で「登りは平気だったのに、次の日に太ももがものすごく痛い」ということがあるのも、下り坂で太ももの筋肉が何度もブレーキ役として働いていたことが一因です。

筋肉痛になりやすいかどうかは、単純に「どれだけ激しく動いたか」だけで決まるわけではありません。

どんな刺激を受けたのか、そしてその刺激に筋肉が慣れているのか。

ここが大きなポイントなのです。

筋肉痛とは?まとめ|筋肉から届く「いつもと違う刺激」のサインを知ろう

筋肉痛は、運動によって筋肉に普段とは違う刺激が加わったあと、時間が経ってから現れる痛みです。

特に、

  • 慣れていない運動をしたとき
  • いつもより負荷を増やしたとき
  • 筋肉が伸ばされながら力を出す動きを多く行ったとき

などに起こりやすくなります。

運動の翌日や翌々日に痛みが出るのは、筋肉が刺激を受けたあと、体の中でさまざまな反応が少しずつ進んでいくためです。

ただし、筋肉痛が起こる詳しい仕組みは、現在でもすべてが解明されているわけではありません。

筋肉の細かな損傷や炎症反応、痛みを感じる神経の変化など、いくつもの要素が関係していると考えられています。

そして、ひとつ覚えておきたいのが、

「筋肉痛になった=良いトレーニングができた」

とは限らないということ。

筋肉痛は、筋肉がいつもとは違う刺激を受けたことを教えてくれるひとつのサイン。

痛みそのものを目標にする必要はありません。

筋肉痛になると、つい「痛いなあ……」だけで終わってしまいます。

でも、その裏側では筋肉が刺激を受け、体がそれに反応しています。

そう考えると、いつもの筋肉痛もちょっと違って見えてきませんか?

自分の体で何が起きているのかを知る。

それも、筋肉を楽しむ方法のひとつです。

筋肉博物館には、まだまだ面白い展示がたくさんあります。

次の展示室でも、あなたの筋肉を一緒にのぞいてみましょう。

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