筋肉を鍛えるとは?筋肉が「もっと強くなろう」と成長する理由
みなさん、筋肉博物館へようこそ。
とつぜんですが筋肉はなぜ鍛えると大きくなったり、力が強くなったりするのかご存知でしょうか。
実は筋肉は、ただ闇雲に成長しているわけではありません。
普段より大きな負荷がかかることで、「このままでは大変だ。次はもう少し余裕を持って対応できるようになろう」と、少しずつその環境に適応していきます。
つまり、筋肉を鍛えるとは、単にムキムキになることではなく、体に【今より少し成長する理由】を与える行為でもあるのです。
今回の展示では、筋肉を鍛えるとはどういうことなのか、なぜ筋肉は成長するのか、そして鍛えることで体にどんな変化が起こるのかを覗いていきましょう。
筋肉を鍛えるとは「負荷に適応できる体をつくること」
筋肉を鍛えるというと、「筋肉を大きくすること」や「重いものを持てるようになること」を思い浮かべるかもしれません。
ですが、もっと根本的に見ると、筋肉を鍛えるとは【今までより大きな負荷に対応できる体へ適応していくこと】です。
筋肉には、与えられた環境に合わせて変化していく性質があります。
たとえば、普段10kgの荷物しか持たない人が、突然20kgの荷物を持てば「重い!」と感じますよね。
筋肉にとっても同じで、いつもより大きな負荷がかかると、体はその刺激に対応しようとします。
そして、適切な休養や栄養をとりながら同じような刺激を繰り返していくと、少しずつその負荷に慣れていきます。
最初は重かった重量が軽く感じるようになったり、以前より多くの回数をこなせるようになったりするのは、この適応が起きているからです。
つまり筋肉を鍛えることは、単に筋肉を疲れさせることではありません。
「これくらいの負荷なら、もう少し余裕を持って対応できるようになろう」
そんなふうに、体へ新しい課題を与え、それに適応していく過程そのものが「筋肉を鍛える」ということなのです。
筋肉は、こちらが何もしなければ大きく成長はしません。
しかし、少しずつ新しい刺激を与えていくと、その刺激に応えるように体も少しずつ変わっていきます。
筋トレとは、筋肉との根比べではなく、いわば「この負荷に対応できる体になってください」と体へお願いする作業でもあるのです。
筋トレをすると筋肉の中では何が起こる?
筋トレをすると、筋肉はただ疲れているだけではありません。
負荷を受けた筋肉の中では、その刺激に適応するためのさまざまな変化が始まっています。
ここからは、筋トレによって筋肉が刺激を受け、回復し、少しずつ成長していくまでの流れを覗いてみましょう。
① 筋肉に普段より大きな刺激が加わる
筋肉が成長するための最初のきっかけは、普段よりも大きな刺激を受けることです。
たとえば、いつもより重いダンベルを持ったり、スクワットを繰り返したりすると、筋肉には普段の生活以上の負荷がかかります。
すると筋肉は、「いつもより大変な仕事をさせられているぞ」と、その負荷を刺激として受け取ります。
このとき筋肉に加わる代表的な刺激が、筋肉が力を発揮しながら引っ張られる「機械的張力」です。
少し難しそうな言葉ですが、簡単にいえば「筋肉にしっかりと力がかかっている状態」と考えて大丈夫です。
この刺激が、筋肉に「今のままでは、この負荷に十分対応できない」と知らせるきっかけになります。
ただし、筋肉を成長させるために毎回ボロボロになるまで追い込む必要はありません。
大切なのは、今の筋肉にとって「少し頑張らなければ対応できない負荷」を与えること。
筋トレで感じるあの「重い」「きつい」という感覚は、筋肉が新しい刺激と出会っている瞬間でもあるのです。
② 体が回復しようとする
筋トレが終わると、今度は体の「回復タイム」が始まります。
トレーニングによって強い刺激を受けた筋肉では、筋肉をつくるタンパク質の合成が活発になり、受けた負荷に対応できるよう体を整えていきます。
ここで覚えておきたいのは、筋肉はトレーニングをしている最中に大きくなるわけではないということ。
筋トレは、あくまで筋肉に「もっと強くなる必要がありますよ」と知らせるきっかけです。
その刺激を受けたあと、食事から必要な栄養をとり、しっかり休むことで、体は少しずつ筋肉をつくり直していきます。
つまり、ダンベルを置いたところで筋トレは終わっていても、筋肉の仕事はまだ終わっていません。
むしろ筋肉にとっては、そこからが次の負荷に備える時間なのです。
③ 筋肉が負荷に適応していく
筋トレによる刺激を受け、回復を繰り返していくと、筋肉は少しずつその負荷に適応していきます。
たとえば、最初は10回で限界だったスクワットが、しばらく続けるうちに12回、15回とできるようになることがあります。
これは、筋肉が「このくらいの負荷なら対応できるようにしておこう」と変化してきた証拠です。
ただし、筋肉の適応にはいくつか種類があります。
筋肉そのものが太くなる「筋肥大」、より大きな力を出せるようになる「筋力増強」、同じ動きを長く続けられるようになる「筋持久力」の向上などです。
つまり、「筋肉を鍛える」といっても、すべて同じ変化が起こるわけではありません。どのような負荷を与えるかによって、体が適応していく方向も変わってきます。
筋肥大・筋力増強・筋持久力にはどんな違いがあるのか、それぞれの特徴については「筋肥大と筋力増強と筋持久力の違い」の記事で詳しく紹介しています。
筋肉の成長の違いについてもう少し深く知りたい方は、そちらの展示ものぞいてみてください。
筋肉を鍛えるには「刺激・栄養・休養」が必要
筋肉を成長させるために大切なのは、筋トレだけではありません。
筋肉に成長のきっかけを与える「刺激」、体をつくる材料となる「栄養」、そして筋肉が回復するための「休養」。この3つがそろって、筋肉は少しずつ負荷に適応していきます。
ここからは、筋肉を育てるために欠かせない3つの要素を順番に見ていきましょう。
刺激|筋肉に「変わる必要がある」と思わせる
筋肉を成長させるためには、まず筋肉に「今のままでは少し大変だ」と感じる程度の刺激を与える必要があります。
そこで登場するのがみんな大好き筋トレです。
いつもより重いものを持つ、いつもより多く動くなど、筋肉に少し大きな負荷をかけることで、「この負荷に対応するには、もう少し変わったほうがよさそうだ」と体に適応するきっかけを与えます。
このとき重要になる考え方が「漸進性過負荷の原則」です。
これは、体に与える負荷を少しずつ段階的に高めていくことで、継続的に成長を引き出すというトレーニングの基本原則。
最初から大きすぎる負荷をかけるのではなく、少しずつ【今の自分より上】を積み重ねていくことがポイントになります。
強すぎる負荷で毎回限界まで追い込むのではなく、自分の今の筋力に合った負荷を少しずつ調整しながら与えていくことが大切です。
筋トレの役割は、筋肉を闇雲にいじめることではなく、筋肉に新しい課題を渡すこと。
「次はこれくらいの負荷に対応できるようになってね」
そう筋肉に伝え続けることが、「刺激」と「成長」をつなぐ大切なステップなのです。
栄養|体をつくる材料を届ける
筋トレで筋肉に刺激を与えたら、次に必要なのが「栄養」です。
どれだけ良いトレーニングをしても、体をつくるための材料が不足していれば、筋肉はただ傷ついただけで十分に成長できません。
なかでも重要なのが、筋肉の材料となる「タンパク質」です。
肉や魚、卵、乳製品、大豆製品などから摂ったタンパク質は、体の中でアミノ酸に分解され、筋肉をつくったり修復したりするために使われます。
ただし、筋肉のために必要なのはタンパク質だけではありません。
トレーニングをするためのエネルギー源となる炭水化物や、体のさまざまな働きを支える脂質、ビタミン、ミネラルなども大切です。
つまり、「筋肉をつけたいから、とにかくタンパク質を摂ればいい」というわけではなく、普段の食事を土台として必要な栄養をしっかり摂ることが基本になります。
筋トレが筋肉への「設計変更のお願い」だとすると、栄養はそのために届けられる「建築材料」のようなものです。
どれだけ立派な設計図があっても、材料が届かなければ工事は進みませんよね。
筋肉を育てるプロである【ボディビルダー】は、まさしく【ボディ】を【ビルディング】しているわけです。
ボディビルダーを目指すわけでなくとも、筋肉に成長してもらうためには、刺激を与えるだけで終わらせず、体をつくるための材料もしっかり届けてあげる事が必要なのはお忘れなく。
休養|回復して適応する時間をつくる
筋肉を育てるためには、トレーニングする時間だけでなく「休む時間」も欠かせません。
筋トレは筋肉に成長のきっかけとなる刺激を与えるものですが、実際に体がその刺激に対応しようと変化していくのは、トレーニングが終わったあとの時間です。
食事から取り入れた栄養を使いながら、体は筋トレによって受けた負荷から回復し、次に同じような負荷がかかっても対応できるよう少しずつ適応していきます。
そのため、「筋肉を早く成長させたいから毎日同じ部位を鍛えよう」と、休む間もなくトレーニングを続ければよいわけではありません。
十分に回復していない状態で強い負荷を繰り返せば、疲労がたまり、トレーニングの質が落ちてしまうことも考えられます。
そして、休養の中でも特に大切なのが「睡眠」です。
眠っている間には体ではさまざまな回復が進んでいます。
筋肉のためだけでなく、次のトレーニングでしっかり力を発揮するためにも、十分な睡眠をとることが大切です。
筋トレが筋肉に渡す「新しい課題」、栄養が体をつくる「材料」だとすれば、休養はその材料を使ってじっくりと体を整える「作業時間」のようなもの。
筋肉を鍛えるというと、どうしても「頑張って動くこと」に目が向きがちですが、休むところまで含めて筋肉づくりです。
刺激を与えたら、栄養を届け、しっかり休ませる。この3つを繰り返すことで、筋肉は少しずつ新しい負荷に適応していくのです。
まとめ|筋肉を鍛えるとは、自分の体に「成長する理由」を与えること
筋肉を鍛えるというと、つい「重いものを持つこと」や「筋肉を大きくすること」に目が向きがちです。
でも、その本質はもっとシンプルです。
筋肉に今までより少し大きな刺激を与え、栄養を届け、しっかり休ませる。
すると筋肉は、その負荷に対応できるよう少しずつ変わっていきます。
つまり筋肉を鍛えるとは、自分の体に「もう少し成長してみよう」と思える理由を与えることなのです。
昨日まで重かったものが、少し軽く感じる。
以前より階段が楽になる。
そんな小さな変化も、筋肉がきちんとこちらの刺激に応えてくれた証拠です。
筋肉の面白いところは、何も言わずに毎日私たちの体を支えながら、こちらが働きかければ少しずつ変わってくれるところにあります。
派手ではないかもしれませんが、続けた分だけ少しずつ「できること」を増やしてくれる。
そう考えると、筋肉はただ体についている組織ではなく、人生を一緒に歩いてくれる頼もしい相棒にも思えてきませんか。
筋肉博物館を出るころに、以前よりほんの少しでも自分の筋肉が気になる存在になっていたら、館長としてはうれしい限りです。
今日もあなたの体の中では、たくさんの筋肉が働いています。
せっかくなら、これから少しずつその存在を知って、育てて、そして一緒に人生を楽しんでいきましょう。
